SAT技術
SAT(Scanning Acoustic Tomography、走査型超音波断層撮影)とは、超音波で半導体内部のボイド、剥離(デラミネーション)、クラックを非破壊で検出する検査技術です。検査対象は、ウェーハ、パッケージ、基板などです。欧米では同じ装置を超音波顕微鏡(SAM)やC-SAMと呼びますが、物理原理は同じです。このページは、半導体の量産検査の観点から、SATの用語・原理・適用分野・装置の形態を整理した技術資料です。
| 言語 | SAT系の呼称(日本・韓国で一般的) | SAM系の呼称(欧米・学術分野で一般的) |
|---|---|---|
| 日本語 | 超音波検査装置(SAT)、超音波映像装置、超音波探傷映像装置 | 超音波顕微鏡(SAM)、走査型超音波顕微鏡、C-SAM |
| 韓国語 | 초음파 검사(SAT), SAT 장비, 초음파 검사 장비 | 초음파 현미경, 주사 음향 현미경(SAM) |
| 英語 | scanning acoustic tomography (SAT) | scanning acoustic microscopy (SAM), C-SAM |
| 中国語(簡体字) | 超声波扫描检测(SAT) | 超声波扫描显微镜(SAM) |
| 中国語(繁体字) | SAT 檢測、超音波掃描檢測(SAT) | 超音波掃描顯微鏡、超音波掃瞄顯微鏡(SAM、C-SAM;亦常標示為 SAT) |
SATは、日本では超音波映像装置や超音波探傷映像装置、欧米では超音波顕微鏡(SAM)やC-SAMとも呼ばれます。いずれも同じ原理の検査技術です。C-SAMは特定メーカーの製品名に由来する呼称です。SATという呼称は、日本の装置メーカーの製品名に由来し、日本や韓国の半導体業界で広く使われています。なお、このサイトでは「ウェーハ」と表記します(「ウエハー」「ウェハ」とも表記されます)。
集束型プローブ(探触子)が短いパルスを送り、試料内部の各境界面から戻る反射波(エコー)を受信して画像を作ります。この方法をパルス反射法(パルスエコー法)といいます。超音波は空気に当たるとほぼすべて反射し、試料まで伝わりません。そのため、プローブと試料の間を水で満たし、超音波が試料の内部に入るようにします。これをカップリング(音響結合)といいます。
反射波の強さは、境界面の両側にある材料の音響インピーダンスの差が大きいほど大きくなります。内部にボイドや剥離があると、固体と空気の境界ができて強い反射が起こり、反射波の位相が反転します。この位相反転によって、欠陥を異物と区別します。反射波が戻るまでの時間は、深さに比例します。そのため、特定の時間範囲の信号だけを取り出す時間ゲート(ゲート)により、目的の深さの界面だけを画像化できます。「断層撮影」という名前はここから来ています。
周波数が高いほど分解能は高くなりますが、減衰が大きくなり(おおよそ周波数の2乗に比例)、深部まで届きにくくなります。検査対象に合わせてプローブを選びます。
| 周波数帯 | 主な対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 15〜50 MHz | 厚いパッケージ、パワー半導体モジュール(DCB基板・AMB基板の接合部)、モールド樹脂が厚い部品 | 深部まで到達、大きな欠陥の検出 |
| 50〜120 MHz | 一般的なパッケージ(BGA、QFNなど)、基板、ダイアタッチ | 量産検査の主力周波数帯 |
| 120〜250 MHz | ウェーハの接合界面、HBM(広帯域メモリ)などの薄い積層構造、微細バンプ | 浅い位置の微細な欠陥の検出 |
| 300 MHz以上 | 表面近傍の画像化、実験室での故障解析 | 量産の全数検査よりも解析向け |
MIT Co., Ltd.(エムアイティ、韓国)のSFSATシリーズは、25〜250 MHzのプローブを使用します。この周波数帯は、パッケージの内部まで超音波を届かせる検査と積層構造の検査を、量産ラインで行う用途に合わせたものです。
| 欠陥 | 発生箇所 | SAT画像での特徴 |
|---|---|---|
| ボイド(void) | ダイアタッチ、はんだ、アンダーフィル、モールド樹脂、ウェーハの接合界面 | 強い反射と位相反転、Cスキャンでは明るい点 |
| 剥離(デラミネーション) | チップとモールド樹脂の界面、リードフレームとモールド樹脂の界面、基板と接着層の界面、積層界面 | 面状の強い反射と位相反転 |
| クラック | チップ、モールド樹脂、基板、はんだ接合部 | 線状の反射、Bスキャンで深さを確認 |
| 未接合(ノンウェット) | バンプ接合部、はんだ接合部 | 接合界面の反射パターンの異常 |
| 異物・気孔 | モールド樹脂、接着層 | 反射はあるが位相反転なし(ボイドと区別) |
パッケージの信頼性評価では、IPC/JEDEC J-STD-035(樹脂封止部品の超音波顕微鏡検査の手順)が規格として使われています。MSL(湿度感度レベル)試験の前後に行う剥離の確認が、代表的な用途です。近年は、検査対象がパッケージからウェーハの段階へ広がっています。ウェーハの積層や接合(貼り合わせ)の工程で生じる接合界面のボイドを、300 mmウェーハの全面で検査する需要が増えています。
| 適用分野 | 検査対象 | 主な欠陥 |
|---|---|---|
| HBM・積層メモリ | 積層の接合界面、マイクロバンプ | ボイド、未接合、剥離 |
| 先端パッケージ(アドバンストパッケージ) | FC-BGA、2.5D/3D、チップレット | アンダーフィルのボイド、バンプのクラック、剥離 |
| パワー半導体モジュール | DCB(DBC)基板・AMB基板、チップ、ベースプレート間の接合部 | はんだ接合・焼結接合のボイド(熱抵抗と寿命に直結) |
| ウェーハ接合 | ウェーハ同士(W2W)、ダイとウェーハ(D2W)の接合界面 | 接合界面のボイド、異物 |
| 基板・積層セラミックコンデンサ(MLCC)・ミニLED | セラミック基板、積層セラミック、LEDパッケージ | 内部のクラック、剥離 |
上記の適用分野は、事業紹介の「超音波検査(SAT)」ページのソリューション分類と同じです。
| 区分 | 実験室型(手動・半自動) | 全自動インライン型 |
|---|---|---|
| 用途 | 故障解析、研究、抜き取り検査 | 量産ラインでの全数検査・抜き取り検査 |
| 試料の搬送 | 専門のオペレーターが試料をセット | ローダ・ハンドラがウェーハ・トレイを自動搬送 |
| 判定 | 専門のオペレーターが画像を判定 | 自動判定(ディープラーニングなど)、分類、SECS/GEMによるデータ連携 |
| 重視する性能 | 分解能、画質 | スループット(処理能力、1時間あたりの検査枚数)、判定の信頼性、ライン連携 |
| プローブ構成 | 通常は1個 | 複数のプローブによる並列スキャン(マルチプローブ)でスループットを確保 |
スループットは、スキャンピッチと構成(プローブ数・検査ゾーン数)によって変わります。装置を比較するときは、同じピッチ、同じ構成の条件で比較する必要があります。
MITのSFSATシリーズは、全自動インライン型の装置です。検査ゾーンごとに複数のプローブが並列でスキャンし、検査ゾーンは2つ以上に拡張できます。ディープラーニングによる自動判定、リアルタイム反り補正(±3 mm)、最大スキャン速度1,200 mm/s、自社開発のSECS/GEMソフトウェアを備えています。
関連ページ:SFSATシリーズの製品ページ
試料を水槽に沈める方式(全没水浸法)は、従来から使われている方式です。水分に敏感な先端工程では、試料を水槽に沈めず、検査する部分だけに水を流す方式を使います。MITの装置は、試料を水槽に沈めない方式を採用しています。ウォーターフォール方式とバブルトラップ(気泡を取り除く機構)により、水との接触を最小限に抑えます。
| 区分 | SAT(超音波) | X線・X線CT | 赤外線(IR・SWIR) |
|---|---|---|---|
| 見ているもの | 界面の状態、弾性特性 | 密度差、形状 | シリコンを透過した光学画像 |
| 得意なこと | 薄い剥離・空気層(サブミクロン)に対する感度が高い、量産ラインでのインライン検査に適する | 配線・バンプの形状、X線CTは3D構造 | 非接触、接合直後の大きなボイドの高速検査 |
| 不得意なこと | 水によるカップリングが必要、上層の欠陥が下層を隠す | 薄い剥離・空気層は検出が難しい、X線CTは撮像に時間がかかる | 深い位置にある微細な欠陥は分解能の確保が難しい、不透明な材料は対象外 |
実際の現場では、それぞれの検査方法を補完的に使います。