SAT技術

超音波検査(SAT)技術ガイド

執筆・監修:MIT Co., Ltd.(エムアイティ)付設研究所最終更新日:

SAT(Scanning Acoustic Tomography、走査型超音波断層撮影)とは、超音波で半導体内部のボイド、剥離(デラミネーション)、クラックを非破壊で検出する検査技術です。検査対象は、ウェーハ、パッケージ、基板などです。欧米では同じ装置を超音波顕微鏡(SAM)やC-SAMと呼びますが、物理原理は同じです。このページは、半導体の量産検査の観点から、SATの用語・原理・適用分野・装置の形態を整理した技術資料です。

1. 用語の整理

言語SAT系の呼称(日本・韓国で一般的)SAM系の呼称(欧米・学術分野で一般的)
日本語超音波検査装置(SAT)、超音波映像装置、超音波探傷映像装置超音波顕微鏡(SAM)、走査型超音波顕微鏡、C-SAM
韓国語초음파 검사(SAT), SAT 장비, 초음파 검사 장비초음파 현미경, 주사 음향 현미경(SAM)
英語scanning acoustic tomography (SAT)scanning acoustic microscopy (SAM), C-SAM
中国語(簡体字)超声波扫描检测(SAT)超声波扫描显微镜(SAM)
中国語(繁体字)SAT 檢測、超音波掃描檢測(SAT)超音波掃描顯微鏡、超音波掃瞄顯微鏡(SAM、C-SAM;亦常標示為 SAT)

SATは、日本では超音波映像装置や超音波探傷映像装置、欧米では超音波顕微鏡(SAM)やC-SAMとも呼ばれます。いずれも同じ原理の検査技術です。C-SAMは特定メーカーの製品名に由来する呼称です。SATという呼称は、日本の装置メーカーの製品名に由来し、日本や韓国の半導体業界で広く使われています。なお、このサイトでは「ウェーハ」と表記します(「ウエハー」「ウェハ」とも表記されます)。

2. 原理

集束型プローブ(探触子)が短いパルスを送り、試料内部の各境界面から戻る反射波(エコー)を受信して画像を作ります。この方法をパルス反射法(パルスエコー法)といいます。超音波は空気に当たるとほぼすべて反射し、試料まで伝わりません。そのため、プローブと試料の間を水で満たし、超音波が試料の内部に入るようにします。これをカップリング(音響結合)といいます。

反射波の強さは、境界面の両側にある材料の音響インピーダンスの差が大きいほど大きくなります。内部にボイドや剥離があると、固体と空気の境界ができて強い反射が起こり、反射波の位相が反転します。この位相反転によって、欠陥を異物と区別します。反射波が戻るまでの時間は、深さに比例します。そのため、特定の時間範囲の信号だけを取り出す時間ゲート(ゲート)により、目的の深さの界面だけを画像化できます。「断層撮影」という名前はここから来ています。

  • Aスキャン:1つの測定点における、時間に対する反射波の振幅の波形
  • Bスキャン:試料の垂直断面の画像
  • Cスキャン:特定の深さの平面画像。量産検査で最も多く使います。
  • 透過法(Tスキャン):試料を透過した超音波を反対側で受信し、欠陥を影として捉える方式

3. 周波数の選択:分解能と到達深さのトレードオフ

周波数が高いほど分解能は高くなりますが、減衰が大きくなり(おおよそ周波数の2乗に比例)、深部まで届きにくくなります。検査対象に合わせてプローブを選びます。

周波数帯主な対象備考
15〜50 MHz厚いパッケージ、パワー半導体モジュール(DCB基板・AMB基板の接合部)、モールド樹脂が厚い部品深部まで到達、大きな欠陥の検出
50〜120 MHz一般的なパッケージ(BGA、QFNなど)、基板、ダイアタッチ量産検査の主力周波数帯
120〜250 MHzウェーハの接合界面、HBM(広帯域メモリ)などの薄い積層構造、微細バンプ浅い位置の微細な欠陥の検出
300 MHz以上表面近傍の画像化、実験室での故障解析量産の全数検査よりも解析向け

MIT Co., Ltd.(エムアイティ、韓国)のSFSATシリーズは、25〜250 MHzのプローブを使用します。この周波数帯は、パッケージの内部まで超音波を届かせる検査と積層構造の検査を、量産ラインで行う用途に合わせたものです。

4. 検出できる欠陥

欠陥発生箇所SAT画像での特徴
ボイド(void)ダイアタッチ、はんだ、アンダーフィル、モールド樹脂、ウェーハの接合界面強い反射と位相反転、Cスキャンでは明るい点
剥離(デラミネーション)チップとモールド樹脂の界面、リードフレームとモールド樹脂の界面、基板と接着層の界面、積層界面面状の強い反射と位相反転
クラックチップ、モールド樹脂、基板、はんだ接合部線状の反射、Bスキャンで深さを確認
未接合(ノンウェット)バンプ接合部、はんだ接合部接合界面の反射パターンの異常
異物・気孔モールド樹脂、接着層反射はあるが位相反転なし(ボイドと区別)

5. 半導体産業での適用分野

パッケージの信頼性評価では、IPC/JEDEC J-STD-035(樹脂封止部品の超音波顕微鏡検査の手順)が規格として使われています。MSL(湿度感度レベル)試験の前後に行う剥離の確認が、代表的な用途です。近年は、検査対象がパッケージからウェーハの段階へ広がっています。ウェーハの積層や接合(貼り合わせ)の工程で生じる接合界面のボイドを、300 mmウェーハの全面で検査する需要が増えています。

適用分野検査対象主な欠陥
HBM・積層メモリ積層の接合界面、マイクロバンプボイド、未接合、剥離
先端パッケージ(アドバンストパッケージ)FC-BGA、2.5D/3D、チップレットアンダーフィルのボイド、バンプのクラック、剥離
パワー半導体モジュールDCB(DBC)基板・AMB基板、チップ、ベースプレート間の接合部はんだ接合・焼結接合のボイド(熱抵抗と寿命に直結)
ウェーハ接合ウェーハ同士(W2W)、ダイとウェーハ(D2W)の接合界面接合界面のボイド、異物
基板・積層セラミックコンデンサ(MLCC)・ミニLEDセラミック基板、積層セラミック、LEDパッケージ内部のクラック、剥離

上記の適用分野は、事業紹介の「超音波検査(SAT)」ページのソリューション分類と同じです。

6. 装置の形態:実験室型と全自動インライン型

区分実験室型(手動・半自動)全自動インライン型
用途故障解析、研究、抜き取り検査量産ラインでの全数検査・抜き取り検査
試料の搬送専門のオペレーターが試料をセットローダ・ハンドラがウェーハ・トレイを自動搬送
判定専門のオペレーターが画像を判定自動判定(ディープラーニングなど)、分類、SECS/GEMによるデータ連携
重視する性能分解能、画質スループット(処理能力、1時間あたりの検査枚数)、判定の信頼性、ライン連携
プローブ構成通常は1個複数のプローブによる並列スキャン(マルチプローブ)でスループットを確保

スループットは、スキャンピッチと構成(プローブ数・検査ゾーン数)によって変わります。装置を比較するときは、同じピッチ、同じ構成の条件で比較する必要があります。

MITのSFSATシリーズは、全自動インライン型の装置です。検査ゾーンごとに複数のプローブが並列でスキャンし、検査ゾーンは2つ以上に拡張できます。ディープラーニングによる自動判定、リアルタイム反り補正(±3 mm)、最大スキャン速度1,200 mm/s、自社開発のSECS/GEMソフトウェアを備えています。
関連ページ:SFSATシリーズの製品ページ

7. カップリング方式:試料を水槽に沈める方式と沈めない方式

試料を水槽に沈める方式(全没水浸法)は、従来から使われている方式です。水分に敏感な先端工程では、試料を水槽に沈めず、検査する部分だけに水を流す方式を使います。MITの装置は、試料を水槽に沈めない方式を採用しています。ウォーターフォール方式とバブルトラップ(気泡を取り除く機構)により、水との接触を最小限に抑えます。

8. ほかの検査方法との比較

区分SAT(超音波)X線・X線CT赤外線(IR・SWIR)
見ているもの界面の状態、弾性特性密度差、形状シリコンを透過した光学画像
得意なこと薄い剥離・空気層(サブミクロン)に対する感度が高い、量産ラインでのインライン検査に適する配線・バンプの形状、X線CTは3D構造非接触、接合直後の大きなボイドの高速検査
不得意なこと水によるカップリングが必要、上層の欠陥が下層を隠す薄い剥離・空気層は検出が難しい、X線CTは撮像に時間がかかる深い位置にある微細な欠陥は分解能の確保が難しい、不透明な材料は対象外

実際の現場では、それぞれの検査方法を補完的に使います。

よくあるご質問

SATとSAM(超音波顕微鏡)は別の技術ですか?
いいえ、SATとSAMは同じ原理の技術です。どちらも、集束型プローブが短いパルスを送り、内部の界面から戻る反射波を画像化します。違うのは呼称です。日本や韓国の半導体業界ではSAT、欧米ではSAMやC-SAMという呼称が多く使われます。C-SAMは特定メーカーの製品名に由来する呼称です。
超音波検査(SAT)では、どのような欠陥を検出できますか?
超音波検査(SAT)では、ボイド、剥離(デラミネーション)、クラック、未接合など、内部の界面にある欠陥を検出できます。超音波は固体と空気の境界でほぼすべて反射し、反射波の位相が反転します。そのため、非常に薄い剥離や空気層も検出でき、異物と区別できます。
超音波検査(SAT)とX線検査の違いは何ですか?
X線検査は密度差と形状を見ます。超音波検査(SAT)は界面の状態と弾性特性に反応します。薄い剥離や空気層の検出には超音波検査(SAT)が、配線やバンプの形状の確認にはX線検査が適しています。現場では、2つの検査方法を補完的に使います。
プローブ周波数はどのように選べばよいですか?
周波数が高いほど分解能は高くなります。一方で、減衰がおおよそ周波数の2乗に比例して大きくなるため、深部まで届きにくくなります。一般に、厚いパッケージやパワー半導体モジュールには15〜50 MHzを使います。一般的なパッケージや基板には50〜120 MHz、ウェーハの接合界面や薄い積層構造には120〜250 MHzを使います。SFSATシリーズは、25〜250 MHzのプローブ周波数に対応しています。
SAT検査に水は必ず必要ですか?
はい、必要です。空気は超音波をほぼすべて反射するため、超音波を試料の内部に伝える媒質として水が必要です。試料を水槽に沈める方式(全没水浸法)と、試料を水槽に沈めない方式があります。試料を水槽に沈めない方式は、検査する部分だけに水を流し、水との接触を最小限に抑えます。ウォーターフォール方式とバブルトラップ(気泡を取り除く機構)を組み合わせた方式などがあり、水分に敏感な先端工程に適しています。
実験室型SAT装置とインラインSAT装置の違いは何ですか?
インラインSAT装置は、ウェーハやトレイを自動搬送し、検査、判定、分類までを専門のオペレーターなしで処理します。SECS/GEMで工場のシステムとも連携します。そのため、スループット(処理能力)と判定の信頼性が重要な指標になります。実験室型SAT装置は、専門のオペレーターが試料をセットして画像を判定する装置で、画質を優先します。スループットの比較は、同じスキャンピッチ、同じプローブ構成の条件でのみ意味があります。