SAT技術
半導体は、HBM(広帯域メモリ)のようにダイを何層にも積層する構造や、チップレットのように複数のダイを1つのパッケージにまとめる構造へと進んでいます。パワー半導体モジュールでは、チップと厚い金属・セラミック基板を接合します。これに伴い、歩留まりと信頼性を左右する欠陥は、表面から、目に見えない接合界面へと移りました。界面に生じるボイド・剥離(デラミネーション)・クラックは、厚さが1 µmに満たない薄い空気層であることが多くあります。こうした空気層を、試料を切断せずに明瞭に検出できる代表的な方法が超音波検査(SAT)です。SATはScanning Acoustic Tomographyの略称で、超音波顕微鏡(SAM)やC-SAMと同じ原理の技術です。このページでは、SATがオプションの検査ではなく、欠かせない工程検査になった理由を説明します。SATの用語・原理・周波数の選び方は「SAT技術ガイド」に、MIT Co., Ltd.(エムアイティ、韓国)の装置の特長は「SFSATの特長」にまとめています。
平面構造の半導体では、不良の多くが表面に現れ、外観検査(AOI)と電気テスト(電気的特性検査)でほとんどを検出できました。積層と異種チップ集積(ヘテロジニアスインテグレーション)が標準になった現在は、状況が異なります。ダイとダイ、ダイとインターポーザ、チップと基板、基板とベースプレートの間で、接合界面の数が大きく増えました。これらの界面は熱膨張係数の異なる材料が接する場所であり、応力、湿気、工程のばらつきが集中します。欠陥が生じる場所が変わったのです。
| 構造 | 問題となる界面 | 代表的な欠陥 | 見逃した場合の影響 |
|---|---|---|---|
| HBM・積層メモリ | ダイ間のマイクロバンプ、ハイブリッドボンディングの接合界面 | 未接合(ノンウェット)、微細なボイド、アンダーフィル未充填 | ダイ1つの欠陥でスタック全体を廃棄、熱抵抗の上昇 |
| 2.5D/3D・チップレットパッケージ | ダイとインターポーザの間、インターポーザと基板の間、ダイとモールド樹脂の間 | 剥離、バンプのクラック、アンダーフィルのボイド | 信頼性試験後の不良、出荷後の市場不良 |
| ウェーハ接合(貼り合わせ、W2W・D2W) | 接合界面 | ボイド、パーティクルによる未接合 | ウェーハ薄化や後続工程でのチップ損失 |
| パワーモジュール | チップとDCB(DBC)基板・AMB基板の間のはんだ層・焼結層、基板とベースプレートの接合部 | ボイド、剥離、焼結層のクラック | 熱抵抗の上昇、過熱、寿命の短縮 |
| 基板、積層セラミックコンデンサ(MLCC)などの部品 | 層間の接合部 | 層間剥離、クラック | 湿気の侵入、電気的な不良 |
これらには共通点があります。欠陥は、シリコン、金属、モールド樹脂などの不透明な材料の下、数十µmから数mmの深さにあります。厚さはサブミクロンであることが多く、初めは電気的に正常に見えます。その後、温度サイクルや湿気にさらされるうちに進展し、不良になります。
検査方法は、それぞれ異なる物理量を見ています。そのため、界面の欠陥に対する感度も異なります。
| 検査方法 | 見ているもの | 検出しやすいもの | 検出が難しいもの |
|---|---|---|---|
| 外観検査(AOI) | 表面の反射光 | 表面の異物・スクラッチ・バンプ形状 | 不透明な材料の下にある欠陥全般 |
| X線(2D・CT) | 密度差による透過量 | はんだボイド、配線・バンプ形状、ブリッジ | 薄い剥離(密度差がほとんどない)、同じ材料間の未接合 |
| 赤外線(IR) | シリコンを透過した光 | ウェーハ接合界面のボイド | 金属・モールド樹脂の裏側にある欠陥、金属層を含む構造 |
| 電気テスト | 電気特性 | オープン・ショート・機能不良 | 電気的にはまだ正常な潜在欠陥(部分的な剥離、ボイド) |
| 超音波検査(SAT) | 界面での音響インピーダンスの変化 | 剥離・ボイド・クラック・未接合、深さごとの位置 | 精密な形状・寸法の測定 |
重要なのは、剥離は厚さではなく、あるかないかで検出する必要があるという点です。X線検査は透過経路上の密度差を見るため、厚さがほとんどない剥離は画像に現れにくくなります。超音波は、固体と空気の境界でほぼすべて反射し、反射波(エコー)の位相が反転します。そのため、空気層がサブミクロンの厚さでも明瞭な信号になります。IPC/JEDEC J-STD-035は、樹脂封止部品の内部にある剥離・クラックを超音波顕微鏡で検査する手順を定めた規格です。MSL(湿度感度レベル)試験の前後に行う剥離の確認に使われます。
各検査方法は競合するものではなく、役割を分担する関係です。形状と配線はX線、表面はAOI、界面はSATが担当し、電気テストが最終的な機能を確認します。詳しい比較は「SAT技術ガイド」の第8節をご覧ください。
原理、画像モード、周波数の選び方は、「SAT技術ガイド」の第2〜3節にまとめています。
超音波顕微鏡は長い間、主に実験室で使われる装置でした。信頼性試験を終えた数個の試料を、専門のオペレーターがセットして画像を判定する用途でした。しかし、次の3つの変化により、検査は量産ラインの中へ、そして全数検査へと移ってきました。
全数検査を量産ラインの中で行う場合、装置に求められる要件が変わります。まず、ウェーハ・トレイの自動搬送とアライメント、専門のオペレーターに頼らない判定と分類、スループット(処理能力)、同じ基準で繰り返される判定が必要です。さらに、工場システムとの連携(SECS/GEM)、水分に敏感な工程のための水の管理、薄い試料の反りへの対応も求められます。実験室型の装置と全自動インライン型の装置の違いは、「SAT技術ガイド」の第6節にまとめています。
| 工程 | 検査のタイミング | 確認する内容 |
|---|---|---|
| ウェーハ接合 | 接合の直後、ウェーハ薄化の前 | 接合界面のボイド・未接合 |
| 熱圧着接合(TCB)・ハイブリッドボンディングによるダイ積層 | ダイ積層の各段階、または積層完了後 | バンプの未接合、アンダーフィルのボイド |
| パッケージ組立 | モールド工程・リフローの後 | ダイとモールド樹脂の間およびダイと基板の間の剥離、クラック |
| パワーモジュール組立 | ダイアタッチ・基板接合の後 | はんだ層・焼結層のボイド、基板の剥離 |
| 信頼性試験 | MSL試験・温度サイクル試験の前後 | 剥離の発生・進展の有無(J-STD-035) |
SAT装置を検討する際は、以下の項目を試料の条件とあわせて確認すると、装置を公平に比較できます。
MITのSFSATシリーズがこれらの要件にどのように対応しているかは、製品ページのモデル別比較表と「SFSATの特長」でご確認いただけます。